最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)2628号 判決 1952年7月15日
本籍
朝鮮咸鏡北道明川郡下〓面邑内里
住居
東京都新宿区富久町一一八番地
無職
原芳夫こと
鄭徹
明治四三年二月一一日生
右に対する銃砲等所持禁止令違反被告事件について昭和二五年八月三一日東京高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人原芳夫こと鄭徹弁護人横田隼雄の上告趣意は後記書面のとおりである。
同第一点について。
所論は、要するに、被告人に対する起訴状謄本の送達が適法でないというのであつて、憲法云々の文字が存在するが、刑訴法違反を主張するに帰し、四〇五条の適法な上告理由にあたらない。かつ、このような主張は、原審で主張されず、従つてまた判断もされなかつた事項であるから、この点においても上告理由とすることができないばかりでなく、かりに、起訴状謄本の送達が適式でなかつたとしても、本件においては、被告人が異議を述べていないのであつてかかる場合は刑訴四一一条の問題とならないことは、当裁判所の判例とするところであるから、いずれの点からも論旨は理由がない。(昭和二五年(あ)第二九二〇号同二六年四月一二日第一小法廷決定、集五巻五号八九三頁参照)
同第二点について。
所論は、原判決の判例違反を主張するのであるが、引用の判例は、所論のような主張が、刑訴三三五条二項の主張に当るかどうかについて判示したものでないから、本件に適切でなく、かつ原判決はすこしも、引用の判例に違反するところはない。また所論末段において刑訴法違反を主張する論旨があるが、もとより適法な上告理由でなく、また原判決がこの点に関し、刑訴三三五条二項の主張に当らないと判示したことは正当であつて、なんら所論のような違法はない。
なお記録を調べて見ても刑訴四一一条に当る事由を認めることはできない。
よつて同四〇八条により、裁判官全員一致の意見をもつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)